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最高裁判所第二小法廷 昭和41年(行ツ)104号 判決 1967年7月21日

上告人 平鹿商事合資会社

被上告人 国 外二名

訴訟代理人 鰍沢健三 外三名

主文

原判決中第一審判決添付別表記載(三)及び(五)の宅地に関する上告人の控訴及び請求を棄却した部分を破棄する。

右の部分につき本件を仙台高等裁判所に差し戻す。

上告人のその余の上告を棄却する。

前項に関する上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人和田吉三郎の上告理由について。

行政処分の瑕疵が客観的であるというためには、処分要件の存在を肯定する処分庁の認定の誤りであることが、処分成立の当初から、関係人の知、不知とは無関係に、また、権限ある国家機関の判定をまつまでもなく、何人の判断によつてもほぼ同一の結論に到達し得る程度に明らかであることを必要とするものである(昭和三七年七月五日第一小法廷判決、民集一六巻七号一四三七頁参照)。しかるに、原判決(その引用に係る第一審判決、以下同じ。)が、第一審判決添付別表記載(三)、(五)の各宅地は選定者鈴木耕助、同三浦栄吉の解放農地の経営に必要なものでないから、同人らの宅地買収の申請を相当と認めた地元農地委員会の認定は違法であると認めたうえで、その認定の誤りであることが何人の判断によつてもほぼ同一の結論に到達し得る程度に明らかなものであつたかどうかを判断するに足る事情を認定することなく、単に処分の対象たる宅地の面積が四六坪或いは一〇三坪という僅かなものであるという理由で、前記瑕疵の明白性を否定したこと、判文上明らかである。したがつて、原審の右判断は、行政処分の無効原因としての瑕疵の明白性に関する解釈を誤り、ひいては審理不尽の違法に陥つたものというべく、この点の論旨は、理由がある。

さらに、上告人は、前記別表記載各宅地の買収処分は令書の交付を欠き全部無効であると主張するが、原判決の確定した事実関係の下においては、原審が右各宅地につき買収を原因とする所有権取得登記が経由されているということから買収令書が上告人に対し適法に交付された事実を推認したことは、相当でり、右の違法を攻撃する論旨は、理由がない。

されば、原判決中、前記別表記載(三)及び(五)の宅地に関する上告人の控訴及び請求を棄却した部分を破棄し、右の部分につき、さらに審理を尽さしめるため、本件を仙台高等裁判所に差し戻し、その余の部分に対する上告を棄却することとする。

よつて、民訴法四〇七条一項、三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判官 奥野健一 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外 色川幸太郎)

上告理由書<省略>

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